技術ではなく「設計思想」の話
サポート詐欺から考えた
サポート詐欺から考えた
「設計思想」
ある日、親のPCで起きたこと。
—— これ、ぜんぶ Web技術 の話です。
SCROLL
事実
何が起きた?
地図を検索しただけ
突然、Windows Defender を名乗る警告が全画面で表示
「閉じられない」感覚に陥る
電話番号が表示される → 電話すると外国人が対応
「修理にはお金がかかる」と案内される
「払わない」と伝えたら、電話は終了
結果:実害ゼロ 支払いなし・遠隔操作なし・個人情報入力なし
証拠
親のPCの画面を、スマホで撮影したもの。
これが、実際の画面
偽の「Windows Defender セキュリティセンター」モーダル
同じ電話番号を3〜4箇所に連打し「今すぐ電話」と急かす
「盗まれる情報リスト」で恐怖を具体化
これ、全部ただの Webページ
正直な感想
「ウイルスに
感染した!?」
正直、そう思いました。
でも、調べてみると——
どう対応したか
じゃあ、どうやって
じゃあ、どうやって
抜け出したのか
Alt+Tab
切り替えできない
✗
Alt+F4
ウィンドウを閉じられない
✗
Ctrl+Alt+Delete
タスクマネージャーが開けた
✓
タスクマネージャーで見ると——ブラウザのCPU使用率が100%。
ブラウザのタスクを終了したら、あっさり解決。
ブラウザのタスクを終了したら、あっさり解決。
OSは無事。暴れていたのは 「ブラウザ」だけだった。
種明かし
攻撃されていたのは、
攻撃されていたのは、
PCではなかった。
¥0
支払い
0件
個人情報の入力
0回
遠隔操作
ファイルもOSも、何ひとつ壊れていない。実害はゼロでした。
見え方 と 正体
見えていたもの と、その実体
見えていたもの
- Windows Defender
- 警告 / 危険
- アクセス遮断
実際の正体
- HTML
- CSS
- JavaScript
つまり「感染したように“見える”UI」を作っていただけ。
気づき ①
ウイルスではなく
ウイルスではなく
「ブラウザを暴走させた」だけ
一行も感染していない。ブラウザの“正規機能”を悪用して、「閉じられない・感染した」と見せていただけ。
🖥️
フルスクリーンAPI
画面を全画面でロックする
🚫
離脱警告の連打
閉じようとすると警告で止める
🔊
警告音のループ
音で焦らせる
これ全部、私たちが学んでいる、普通のWeb機能。特別なハッキング技術なんて、使われていません。
気づき ②
技術は同じ。違うのは「設計思想」
同じ技術でも、何のために使うかで真逆になる。
フルスクリーン
良い没入感を生む
今回逃げられないと思わせる
モーダル
良い確認を促す
今回恐怖を与える
通知音
良いお知らせ
今回焦らせる
エラー
良い原因を説明する
今回恐怖だけを伝える
UI
良い判断を助ける
今回判断を奪う
本質
攻撃対象は、PCではなく
攻撃対象は、PCではなく
人間だった
「ハッキングする」ではなく
「ハッキングされた、と“思わせる”」
「ハッキングされた、と“思わせる”」
つまり狙われていたのは、PCではなく 人間の心理(恐怖・焦り)。
気づき ③
—
いちばん“脆い”のは、人間
ソフトのセキュリティは年々固くなる。でも人間の恐怖・焦りは、昔から変わらず脆いまま。
🔒
システム
(年々強固に)
(年々強固に)
🧠
人間の心理
(最弱の輪)
(最弱の輪)
だから攻撃者は「技術の穴」ではなく 「心理の穴」 を狙う。
セキュリティを突破するより、人を慌てさせるほうが速いから。
開発者として
普段は“正常系”を作る。
普段は“正常系”を作る。
でも今回は——
普段つくるのは、こういう「うまくいった」状態。
保存成功ログイン成功予約完了
でも今回見たのは、「異常だ」と思わせる表示。
ウイルスを検出アクセスを遮断今すぐ電話を
本当に異常なのではなく、
「異常だと“思わせる”設計」だった。
「異常だと“思わせる”設計」だった。
自分ごとにすると
同じ「予約できない」でも
悪い例
予約できません
良い例
14:00 は予約済みです。
14:30 / 15:00 に空きがあります。
14:30 / 15:00 に空きがあります。
同じ機能でも、設計思想しだいで体験はまるで変わる。
今回の学び
技術そのものに、
技術そのものに、
善悪はない。
HTML も CSS も JavaScript も—— 便利なサービスを作ることも、人を混乱させることもできる。
だからエンジニアは、「どう作るか」だけでなく
「何のために作るか」を考える必要がある。
「何のために作るか」を考える必要がある。
まとめ
攻撃していたのは、PCではなく
攻撃していたのは、PCではなく
「人間の認知」だった。
同じWeb技術でも、設計思想しだいで
人を安心させるUIにも、人を混乱させるUIにもなる。
これからも「人が安心して判断できるUI」を
意識して作っていこうと思いました。